チベット、青蔵鉄道(西寧〜ラサ)で高山病になった
西寧からラサへ憧れの青蔵鉄道に乗ったはいいが、高山病で苦しんだので、メモしておく。
高山病とは
以下、MSDマニュアル家庭版からの抜粋:
急性高山病は、軽症型の高山病で、最もよくみられます。標高2000メートル程度から発症することがあります。通常、高度を上げてから6~10時間以内に症状が現れ、多くの場合、頭痛のほかに、ふらつき感、食欲減退、吐き気と嘔吐、疲労、脱力、易怒性、睡眠障害などがみられます。急性高山病の症状を二日酔いのよう、と表現する人もいます。症状は通常、24~48時間続きます。ときに急性高山病はより重症なタイプの高山病に進行します。
高山病になるまでの状況と症状
21:15、中国の西寧(2275m)から青蔵鉄道に乗車、青海省とチベット自治区の境界となるタンラ峠(5072m)を越え、22時間かけて終着駅のラサ(3600m)へ。
朝起きたときからなんとなく気持ち悪かったが、まだリンゴを食べられるくらいの程度だった。徐々に悪化し、私は二日酔いのような吐き気、ダンナは吐き気と下痢で、車中ほぼ寝たきりに。
列車の中は高山病対策で壁から酸素が吹き出してはいるが、どうやら寝ている間に呼吸が浅くなり、血中酸素濃度が下がったようだ。
4人部屋の寝台車のコンパートメントをシェアしたのは50-60代の中国人のご夫妻だったが、私たちが昼になっても何も食べず寝ていると、ジェスチャーで「食べなきゃ元気が出ないよ」と大きな梨をくれた。
が、その奥様も夕方にはダウンし、4人中3人がため息をつきながら寝転がり、ときどきトイレに駆け込む状態だった。
治療と支払った金額
ラサに到着後、現地ガイド(中国人)の勧めでホテルで医者に診てもらったところ、血中酸素濃度が75%前後、心拍数も通常よりかなり高め。
(平地で通常100%、高地で85%あればOKで、80%を切ったら治療を検討すべきと現地ガイド。)
酸素吸入と点滴をしてもらい、だいぶ回復。
高山病は翌日には順応して回復する人が多いそうで、酸素吸入しても一時的に良くなるだけだから順応するまで酸素を吸わないほうがいい、という意見もある。
ただ、我慢しすぎて重症化し、飛行機で高度の低い都市まで移動が必要となったり、亡くなる人も毎年いるようなので、ここは大人しく現地の医者の判断に任せることにした。
泊まったホテルのロビーには高山病の医者が常駐していたが、ガイドが部屋に連れてきたのは「軍のお医者さん」という割に柔和な30代男性で、点滴の間はスマホをポチポチやっていた。
治療後の症状
治療により爪や唇に血色が戻り、気分もいったん改善したが、また徐々にだるくなっていった。
翌朝からゆっくりペースで観光したが、翌々日になってもダンナは下痢が止まらず食欲もないまま。私が支えて歩くような状態で、再度受診することになった。
ダンナの酸素濃度は78%で酸素吸入&点滴。私は88%で、高地順応できているようだった。
だが、私はその翌日あたりから下痢になり、結局帰国までお腹に爆弾を抱えた状態に…。
「高山病=頭が割れるように痛い」というイメージだったのだが、まさか消化器系がやられるとは。
(酸素が足りないと消化できなくなるらしい。当初食中毒も疑ったが、食事内容からして可能性は低い。)
ポカリスエットの粉末を持って行って良かった…。
高山病の薬
- ダイアモックス
出国前処方してもらったダイアモックスという高山病の薬を乗車前日から服用していたのだが、現地ガイドいわく「ダイアモックスは頭痛にしか効かない、飲まない方が良い」。飲まない方が良い理由の説明もあったが、朦朧としていて覚えていない。
ダイアモックスを服用していたせいか、恐れていた頭痛は出なかった。
- 「紅景天」という漢方薬(カプセル)
西寧の現地ガイドから買い、列車に乗る直前に飲んだが、これがどう作用したかは不明。
- 現地の医者にもらった薬
4回分、飲むように処方されたが、藁にもすがるような状態だったので、言われるがまま服用。
医者に払った金額
酸素吸入+点滴+4回分の飲み薬(+医師の出張費?)は1回 1人2300元(約3万8千円!)だった。
出会ったばかりのガイドと医者に「3万8千円」と言われ、疑い深い私は金額の妥当性が判らずモヤモヤしたのも事実。日本で10割負担だったとしたらいくらになるのだろうか。
支払は現金のみ。
手持ちの中国元が足りなかったがガイドが日本円を両替してくれた。
ダンナが2回目の治療を受けるときはその日本円すら足りず、中国銀行ATMでクレジットカードの海外キャッシングを利用した。
治療費は海外旅行保険で後日戻ってきた。(いつもはクレジットカード付帯の保険のみのことが多いが、今回は場所が場所だけに、別途保険に加入していた。)保険会社には、医者にもらった診断書と領収書とを提出した。保険会社から1回電話での問い合わせがあったが、内容は形式的なもので、トラブルはなかった。
高山病になってからの現地での過ごし方
私たちは個人旅行(外国人観光客にはガイドの同行が義務付けられているため、ガイド付き)だったので、体調に合わせてスケジュールをフレキシブルに変更できたのが幸いだった。
担当ガイドはできる限り体調に合わせてルートを組んでくれ、チベットを満喫できるよう奔走してくれた。
団体ツアーだったら、まわりに迷惑をかけないよう我慢してしまいがち。日本人は性格上、特に気を付けたほうが良いと思った。
ホテルのロビーに集合したトレッキングの団体のガイドが
「私やっぱ行けないかも…」としゃがみ込む白人女性に
「今日には順応するから大丈夫!You can do it!」と参加させようとしている場面に遭遇した。
あの女性は大丈夫だったのだろうか。
私たちはトレッキングはしていないが、ポタラ宮やラサ周辺の多くのお寺・観光スポットは見学に階段や坂を登る必要がある。高山病で酸素が足りないのに、ぜーぜー言いながら登ることになるので、けっこう辛い。
ガイドと医者から、「風呂禁止、シャワーも短時間で」と指示あり。風呂や暑いシャワーは酸素を消費すること、また心臓への負担がある、というような説明だった。
ラサで高山病になる人の割合
ガイドに聞いてみたら「三分の一くらいかな」ということだった。治療が必要になる人の割合は聞き忘れた。
いろいろな文献をみてみると、20〜50%程度と書いてあることが多いので、深刻度はわからないが、それくらいなのだろう。
鉄道と飛行機とどっちが高山病になりにくい?
以前ハワイ島のマウナ・ケア(4205m)の頂上で星を見るために車で登った際は何も起こらなった。まわりにも高山病の症状の人は見当たらなかった。
高山病は酸素が足りなくなってから6時間〜12時間後に発症する、という記述もあり、マウナ・ケアにはほんの数時間の滞在だったから発症しなかったのかもしれない。
帰国後、上海からラサに飛行機で行ったことがあるという人と話したが、男性4人中1人だけ中程度の頭痛が一晩続き、他3人は特に問題なく過ごせたとのことだった。
鉄道でゆっくり行く方が高地順応できるという意見をよく見るが、5000m級の山を越えることを考えると、飛行機でラサに着き、順応するまで半日はゆったり過ごす方がよかったりしないのだろうか。(次に行くことがあったら試したい。)
また、寝台列車で寝ながら高地に入ってしまったのもダメだったのかもしれない。寝ると呼吸が浅くなりがち。寝ずに意識的に酸素を取り込んでいたらどうだっただろうか。
妹がマチュピチュ観光のためにクスコ(3400m)へ行った際は、高山病の症状が出たのは若者ばかりで、高齢者は元気だったとのことだが、関係あるのだろうか。
対策と持ってると良いもの
以下、MSDマニュアル家庭版からの抜粋:
到着後1~2日間は激しい運動を避けると高山病の予防に役立ちます。ボリュームのある食事を何回かとるよりも、食事の回数を増やし、消化されやすい炭水化物を豊富に含む食事(果物やジャム、スターチなど)を少量ずつとることも有効です。カフェインを含まない飲みものを多くとるようにします。アルコールや鎮静薬は、急性高山病が発生するリスクが増大し、急性高山病に似た症状を引き起こすため避けるべきです。
個人的に持っていて役立ったものは、ポカリスウェットの粉末。ウィダーインゼリー的なものがあれば、もう少し栄養補給できた気がする。フリーズドライのお粥があったら良かったかも。
酸素ボンベはホテルの売店等で売っていた。
まとめ
高山病は頭痛だけでなく、下痢や嘔吐などの症状も伴うこともあるため、万全の準備が必要。
誰が発症するかは最後までわからない上、高度を上げてだいぶ経ってから症状が出るので、最後まで「自分は大丈夫」と思わず養生することが大切だと思う。
これを読んだ方には症状が出ないようにお祈りしておきます!